STSとは、「科学・技術・社会」(Science,Technology,and Society)の略です。またSTS教育とは、科学、技術、及び社会という三者の相互作用に関する教育です。あるいは科学・技術に深く関連した社会的問題の教育と言うことができます。このSTS教育は、イギリスやアメリカなど先進国の、とりわけ理科教育で大きな運動となっています。大きなうねりとなったのは1980年頃からで、例えば、イギリス理科教育の推進母体であるASE(The Association for Science Education)は1984年に『科学を考え直してみませんか−科学をその社会的文脈において教える−』という報告書を出版していますll))。またアメリカの理科教育関連学協会の連合体であるNSTA(The National ScienceTeachersAssociation)の1985年報のタイトルが、まさに「科学・技術・社会」となっているのです11)。こうした動きの背景としては、大別して次の三つのことが指摘できます。
なお、旧学習指導要領下の高校における「現代社会」や「理科」といった科目、現行学習指導要領下の高校における(総合理科」や「物理A」等のAが付された科目には、STS教育的色彩をもつ教材がいくらカ)認められます。STS教育について詳しく言及することが紙幅の都合でできません。最後に先述のASEによるSATIS(Science and Technlogy in Society)開発の目的13)の一部を次に掲げるとともに、章末に参考文献を示しておきます14)。